災害用ドローンとは?自治体の導入ガイド

監修: 西沢俊広(FUN ROBO STUDIO株式会社代表取締役/公立はこだて未来大学准教授)。NEC でコミュニケーションロボット、宇宙機センサー、インフラ点検ドローン等の研究開発・事業化に従事。

執筆: Drone Shot Rescue 編集部(FUN ROBO STUDIO株式会社)

情報基準日: 2026年10月27日

本記事の立場: 当社は自治体・消防向け災害用ドローンシステムの提供事業者です。制度・統計・他自治体の事例は公的資料を出典とし、自社製品に関する記述は章を分けて記載しています。

結論:自治体の災害用ドローンは「機体選び」より「運用モデル選び」が先

災害用ドローンの導入では、どこに気をつければよいのか?先行自治体の事例から見えてくるのは、機体の性能ではなく、「誰が、どの体制で、発災後何分で飛ばし、映像を誰に届けるか」を先に決めていることです。

  1. 運用モデルは3種類:①職員が自ら飛ばす「直営型」②民間事業者との協定・委託による「協定型」③初動は職員、広域・専門調査は協定先という「併用型」。人員や予算の状況に応じて、③も選択肢になります。
  2. つまずきは「人」と「つなぎ」: 先行自治体の課題として多いのは、操縦者がすぐに集まらない、維持費が重い、協定がなく出動までに時間がかかる、有人機との調整ルールがない、といった運用面の問題です。
  3. 費用は「機体+人+維持」で見る: 公表例では、消防用の業務機が1機あたりおよそ130万〜240万円。機体費用に加え、資格取得費用や、訓練・保守・バッテリー更新などの継続費用もかかります。活用できる財源の一つに、緊急防災・減災事業債(令和12年度まで延長)があります。ただし対象となるには、消防庁が示す機能要件(防水性能など)を満たす必要があります。

災害用ドローンとは?「空撮ドローン」との違い

災害用ドローン(防災用ドローン)とは、地震・風水害・土砂災害・林野火災などの際に、被害状況の把握、行方不明者の捜索、孤立地域への物資輸送、対策本部への情報共有などに使う無人航空機です。

機体そのものは一般の業務用ドローンと大きく変わらないこともあります。違いは、次の3つがそろっているかどうかです。

要素内容欠けると起きること
悪条件への備え防水性能、予備バッテリー、飛行中止基準雨や夜間の発災で飛ばせない
即応できる体制複数の操縦者、出動基準、協定先操縦者が集まるまで初動が遅れる
判断に使える共有の仕組み映像伝送、地図・3D化、共有先の取り決め撮っただけで対策本部の判断に使われない

中部地域の活用事例集では「防災・災害対応」が最多

中部次世代空モビリティ社会実装準備ネットワーク(事務局:経済産業省中部経済産業局)が2025年12月にまとめた「自治体によるドローンの活用事例集 Vol.2」では、中部7県のうち5県22市3町1村から集めた86 事例のうち、「防災・災害対応」が34事例で最も多く、次いで「インフラ維持管理」(18)、「農林水産業」(15)、「物流」(10)と続きます(1つの事例が複数の分野に該当するため、分野別の合計は86を超えます)。

この事例集からは、防災・災害対応に加え、インフラ維持管理など平時の業務にもドローンが活用されていることがわかります。防災だけでなく平時の点検業務も含めて運用を設計することで、飛行機会を確保し、練度の維持につなげられます。

自治体の3つの運用モデル:直営型・協定型・併用型

事例を並べると、自治体の運用方法は大きく3つに分けられます。

モデルしくみ向いている自治体弱点
①直営型職員が操縦し、自前で機体を管理中山間地が広く孤立リスクが高い、訓練の時間を確保できる異動・不在で操縦者がいなくなる
②協定型地元企業と災害時協定や業務委託を結ぶ職員数が少なく、自前で練度を保つのが難しい協定先も被災する、到着まで時間がかかる
③併用型初動の状況確認は職員、広域調査・専門機は協定先職員と協定先で役割を分担する自治体役割分担を文書化しておかないと混乱する

直営型の例

長野市は、危機管理防災課とインフラ整備関係部局の職員で「災害支援ドローン隊」を編成し、定期訓練を行っています。令和7年度以降は、所管施設の点検にも活用して効果を検証しています。岐阜県は県内各圏域に機体を配備し、主に防災担当職員を対象に、これまでに操作できる職員を261名育成したと報告しています。直営型を成り立たせるには、このように操縦者を「数で」確保する発想が欠かせません。

協定型の例

岐阜県美濃市は、習得に時間がかかり継続訓練も必要という理由から、市としてはドローンを扱わず、市内の専門事業者との協定で対応する方針をとっています。長野県上田市では、協定を結ぶ地元企業が総合防災訓練で現場映像を災害対策本部へ共有し、有効性を確認しました。静岡県掛川市は協定事業者への委託で「高校生ドローン防災航空隊」を発足させるなど、協定を地域の人材育成と組み合わせる例も出ています。

併用型を選択肢にする理由

協定型だけでは、協定先自身の被災や道路寸断で到着が遅れるリスクがあります。一方、直営型だけで高機能機や測量級の調査まで抱えるのは、小規模な自治体には負担が大きくなる場合があります。そこで、「発災直後の状況確認」だけは職員が操作しやすい機体で担い、その後の広域調査や熱画像による捜索は協定先・消防と分担する併用型が、自治体の体制によっては現実的な選択肢になります。

先行自治体がつまずいた5つの課題と対策

公開されている事例報告や能登半島地震の検証から、導入後に表面化しやすい課題を整理しました。

課題実際に報告されている内容対策
①操縦者がすぐに集まらない岐阜県郡上市消防本部では、有資格者のみが飛行できる運用で、各当務に有資格者がいないため初動が遅れることが課題とされました毎年計画的に有資格者を増やす。操作を支援する仕組みで操縦できる人の裾野を広げる
②維持費が重い長野市消防局は、操縦員の育成と機体維持管理のランニングコストを課題に挙げています導入時に5年分の維持費を試算し、平時業務の予算と組み合わせる
③協定がなく活動開始が遅れる能登半島地震を受けて愛知県が自治体・関係機関に行ったヒアリングでは、「県や被災市町村とドローン事業者との協定がなく、現地入りしたドローン事業者が活動開始するまでのタイムラグがあった」との声が挙がっています平時に協定を結び、連絡手順と到着目安を取り決める
④有人機との調整ルールがない同じヒアリングでは、「有人航空機とドローンの航空運用調整のルールが整備されておらず、衝突の危険性を感じる場面があった」との声も挙がっています対策本部・航空部隊と「いつ、どこで、何mまで」を共有する手順を決める
⑤通信が途絶する長野県の検証では、LTE 回線は大規模災害時に機能しない可能性があるため、当面は2.4GHz 帯(送信機と機体の直接通信)で使用できる飛行ルートを事前に検討するのがよいとされました通信が途絶した場合のデータの持ち帰り方も含め、平時に訓練しておく

国立研究開発法人防災科学技術研究所の内山庄一郎氏も、能登半島地震の対応を踏まえ、自治体等が発災後に自らドローンを活用できる体制が未構築であることと、有人機との空域管理を2つの課題に挙げています。いずれも、機体を買うだけでは解決しない問題です。

また、三重県志摩市は、災害時に円滑にドローンを使うには日常のユースケースの構築が重要としつつ、「日常ユースケースの構築こそが難しく、大きな課題であると感じていた」と振り返っています。平時に飛ばす理由をつくれるかどうかが、導入の成否を分けます。

発災から復旧まで:自治体がドローンで確認すること

自治体(特に防災部局)と消防では、ドローンに求める情報が異なります。消防は救助・消火のための情報、自治体は住民を守るための全体像と復旧のための記録です。

フェーズ自治体が知りたいことドローンで得る情報
発災前(大雨の予報時など)危険箇所の現状斜面・河川・避難所周辺の「平時の姿」の記録
発災直後〜数時間どこで何が起きているか崩落・浸水・道路寸断の範囲、孤立集落の有無
数日後避難・応急対策の優先順位被害の広がり、二次災害の兆候
復旧期罹災証明、復旧計画建物被害の記録、崩落土量、工事の進捗

発災前の記録は意外に重要です。岐阜市消防本部は、大規模災害時に撮影した写真からオルソ画像を作り、災害前と後の現場を比較できるようにしています。静岡県掛川市も、広域避難所や海岸線を平時に空撮し、発災時との比較資料をつくっています。「平時に同じ場所を同じ経路で撮っておく」ことは、訓練と防災の両方に効く運用です。

復旧期の使い方としては、令和6年能登半島地震では、石川県珠洲市で対口支援自治体(熊本市・浜松市)や民間企業が連携し、ドローンや360 度カメラの画像を使って住家被害認定調査を遠隔で判定する取り組みが行われ、判定結果は罹災証明書の発行に使われました。罹災証明の交付を早める手段としても、ドローンは使われ始めています。

必要な機能:消防庁の要件を「ものさし」にする

消防庁は、自治体の防災部局・消防本部・消防団が整備する災害対応ドローンについて、地方財政措置の対象となる機能要件を示しています(令和8年3月31日通知)。

  • 必須: 機体と搭載カメラが防水性能等級3 以上、動画を撮影して現場活動に活用できること
  • 任意: 熱画像、暗所撮影、高倍率ズーム、リアルタイム伝送、自動航行、物件の搬送・投下など
  • 防災部局の用途要件: 物資輸送、防災情報システムへの映像伝送、被害状況の把握や住民への情報伝達などの災害応急対策

必須要件はあくまで「財源の対象になるか」の基準です。実際に優先する機能は、前章の「自治体が知りたいこと」から逆算して決めます。たとえば、高岡市消防本部は降雨・降雪時の運用に制限があったことから、令和6年に全天候型の機体へ更新しました。運用してはじめて「何が足りないか」がわかるのも、よくある流れです。

費用の目安:公表されている自治体の実例

災害用ドローンの費用は機種と構成で大きく変わります。参考として、自治体が公表している予算・落札額の例を挙げます。

自治体内容金額(公表値)
岐阜県飛騨市消防本部ドローン1機の更新(令和5年度。防塵防滴、赤外線・ズーム一体カメラなど)約237万円(予算)
広島県三原市消防本部の災害対応ドローン(令和8年度)約156万円(税込・落札)
岐阜県岐阜市消防本部向けドローン2セット(令和7年度)約256万円(税込・落札)
岐阜県飛騨市ドローン隊員の操縦ライセンス取得(令和5年度)約126万円(予算)
静岡県掛川市高校生ドローン防災航空隊の運用(協定事業者への委託、令和7年度)約190万円(委託料)

この表からわかるのは、機体だけでなく、人材育成や運用にも予算が必要だということです。予算要求では、機体・付属品、研修・資格、保険・保守、バッテリー更新を分けて計上しておくと、次年度以降の説明もしやすくなります。地方債・交付金・無償貸与・寄附まで含めた財源の整理は、別コラム「災害用ドローンの財源ガイド」として今後公開予定です。

当社の実証からわかったこと:初動の20分の内訳

当社は2025年8月、北海道木古内町萩山で、自社開発の災害初動支援システム(後述のDrone Shot Rescue)を用いて、災害現場を想定した実証を行いました。現場到着から、関係者が3D モデルをURL で閲覧できるまでの所要時間は合計約20分でした。

工程所要時間
機材の準備2分
飛行経路の生成2分
撮影飛行3分
データ送信3分
3Dモデル生成10分

(撮影範囲、データ量、通信環境により所要時間は変わります。)

この内訳から読み取れるのは、「飛ばす」工程より「送る・形にする」工程のほうが時間を占めるということです。飛行そのものは3分でも、対策本部が判断に使える形になるまでにはその数倍の時間がかかります。導入を検討する際は、機体の飛行性能だけでなく、「撮影後に何分で、誰が、何を見られるか」を実機で確かめることをおすすめします。あわせて、通信が使えない場合にデータをどう持ち帰るかも、前述の長野県の検証と同様に事前の取り決めが必要です。

導入から運用定着までの6ステップ

  1. 目的の整理: 地域防災計画と過去の災害履歴から、ドローンで確認したい情報と場所を決める。
  2. 運用モデルの選択: 直営・協定・併用のどれにするか。消防本部との役割分担もここで整理する。
  3. 実機での実証: 実際の担当職員が操作し、「現場到着から共有まで何分か」を計測する。
  4. 財源と調達仕様の確定: 機能要件、セキュリティ要件、維持費を含めて予算化する。
  5. 規程・協定の整備: 出動基準、飛行前確認、映像の共有先、協定先への連絡手順を文書にする。
  6. 平時運用で練度を維持: 点検・定点撮影・防災訓練で月に一度は飛ばし、異動に備えて複数名を育成する。

Drone Shot Rescueの場合:少人数・限られた予算でも初動把握が可能

Drone Shot Rescue は、公立はこだて未来大学のエンジニアリングとデザインの研究シーズをもとに、併用型の「職員が担う初動把握」を想定して開発したシステムです。

  • 専用Android アプリで地図上の範囲を指定すると、飛行経路の作成と撮影・帰還を支援します(山・川・海・建物の4モード)。飛行中は操縦者の監視が必要です。
  • 撮影画像から3D モデルを生成し、URL で対策本部や関係機関と共有できます。
  • 導入費用は、機体・付属セット・システム・運用研修を含めて50万円〜(税別。税込55万円〜)です。

一方、雨・雪・強風時は飛行できず、赤外線カメラにも対応していません。このため、消防や協定先が持つ全天候型・熱画像機の代わりではなく、「日中の広域把握と共有を、職員だけで素早く行う」役割での導入をおすすめしています。なお、Drone Shot Rescue は緊急防災・減災事業債の機能要件(防水性能)の対象外ですが、初期費用を50万円〜に抑えているため、一般財源や平時の点検・DX 推進の予算などで単年度に導入しやすい価格帯です。詳しくはサービス概要と活用シーンをご覧ください。

よくある質問

Q. 市町村の防災課と消防本部の両方にドローンが必要ですか?

A. 大規模災害時、消防は救助・消火が優先です。被害の全体把握や復旧のための記録は防災部局の役割になるため、両方で持つ自治体もあります。持たない場合も、役割分担と映像の共有方法は地域防災計画で整理しておくことをおすすめします。

Q. 自前で持たず、民間との協定だけでも大丈夫ですか?

A. 実際に協定で対応している自治体もあります。ただし協定先自身の被災や到着の遅れを想定し、発災直後の状況確認だけは職員が行える体制(併用型)も検討すると安心です。

Q. 職員が操縦するには国家資格が必要ですか?

A. ドローンの国家資格(無人航空機操縦者技能証明)が必須となるのは、立入管理措置を講じずに第三者の上空で行う特定飛行(カテゴリーⅢ飛行。一等資格に加え、第一種機体認証と飛行の許可・承認も必要)に限られます。それ以外の飛行では資格は必須ではありません。ただし資格がない場合、人口集中地区の上空や夜間・目視外などの特定飛行には、国土交通大臣の許可・承認が必要です。

一方、国や自治体(その依頼を受けた者を含む)が、事故・災害に際して人命や財産に急迫した危難のおそれがある場合に、捜索・救助(危険箇所の調査・点検や物資輸送などを含む)のため、許可・承認を申請するいとまがない状況で飛行させるときは、航空法第132条の92の特例が適用されます。これにより、飛行禁止空域や飛行方法、飛行計画の通報などに関する規定の適用が除外され、許可・承認は不要になります。ただし、飲酒時の飛行禁止や飛行前の確認といった基本ルールや機体登録は引き続き必要です。また、許可・承認を得た場合と同程度の安全確保を自ら行う必要があります。空港周辺、緊急用務空域、地表から150m以上の高さで飛行させる場合は、関係機関と調整のうえ、管轄の空港事務所への通知が必要です。

復旧のための記録など緊急性のない被害調査や、平時の訓練・点検では通常のルールが適用され、飛行内容によって許可・承認が必要です。詳しくは別コラム「災害時のドローン飛行ルール」(今後公開予定)で解説します。

Q. 導入前に現場で試せますか?

A. Drone Shot Rescue では、活用したい現場や目的を伺い、デモ・実証をご案内しています。構想段階や予算化前のご相談も可能です。

まとめ

自治体の災害用ドローンは、「どの機体を買うか」より前に「どの体制で飛ばし、どう共有するか」を決めることが成否を分けます。先行自治体の事例が示すように、課題の多くは操縦者の確保、維持費、協定、有人機との調整、通信といった運用面にあります。自地域に合う運用モデルを選び、平時の点検や定点撮影で飛ばし続けることが、いざという時に使える体制づくりの近道です。

導入・実証のご相談はお問い合わせフォームから受け付けています(受付後3 営業日以内にメールでご連絡します)。

出典・参考資料

  • 中部次世代空モビリティ社会実装準備ネットワーク/経済産業省中部経済産業局「自治体によるドローンの活用事例集 Vol.2」令和7年12月
  • 消防庁「消防防災分野におけるドローンの活用について(通知)」令和8年3月31日
  • 内山庄一郎(国立研究開発法人防災科学技術研究所)「災害対応でのドローン活用の期待と課題(令和6年能登半島地震の災害対応を受けて)」令和5年度第4回災害レジリエンス共創研究会、2024年3月5日
  • ESRI ジャパン株式会社ほか「令和6年能登半島地震における石川県珠洲市でのドローンや360 度カメラを活用した住家被害認定調査の遠隔判定」2024年2月21日
  • 飛騨市「令和5年度予算主要事業の概要(事業別説明資料)消防本部」
  • 三原市「令和8年度入札結果(物品調達など)」
  • 岐阜市「入札結果(価格競争)令和7年度物品購入・売払第三四半期(10月~12月)」
  • 国土交通省航空局「航空法第132 条の92 の適用を受け無人航空機を飛行させる場合の運用ガイドライン」令和6年11月29日付
  • 愛知県「災害時の次世代空モビリティ利活用に向けた体制の構築について」(資料1)
  • FUN ROBO STUDIO株式会社実証データ(2025年8月、北海道木古内町萩山)

※本記事は情報基準日時点の公表情報をもとにしています。制度や金額は変わることがあるため、実際の導入にあたっては最新の資料と担当部署への確認をおすすめします。